足りない教員、増えない教員
全国の学校現場で、教員不足が問題となっています。文部科学省の調査によると、2021年5月時点で2065人の不足が明らかになっていましたが、NHKによる同様の調査(都道府県や政令指定都市など全国68の教育委員会が対象、国と同じ基準)では、2022年5月時点で、小学校で1487人、中学校で778人、高校で214人、特別支援学校で321人と合わせて2800人不足していることがわかりました。国の去年の調査結果から735人、率にして36%増えています。文部科学省の発表によると、教員免許状の授与件数も減少しています(2020年度は計19万6357件(前年度比7440件減)で、データのある03年度以降では初めて20万件を切って最少となった)。つまり新しい教員もなかなか増えないということです。文科省は「過労死ライン」を超える教員の長時間労働の実態が広く知られ、教職が敬遠されている可能性があるとみているようですが、このような状況が続くと、教員不足にますます拍車がかかってしまう恐れがあります。
現場への影響
子どもの学びにも影響が出ています。NHKの調査では、教員不足により子どもの授業や活動、いじめや不登校の対応など何らかの影響が「出ている」と答えたのは11の教育委員会で、「出るおそれがある」と答えた47つとあわせると全体の85%を占めています。
具体的には、
「教員がいない教科の授業を教員が確保できるまで先送りしている」
「教科外の教員が教えることで専門的に学ぶ機会を失っている」
「特別な配慮を必要とする子どもの緊急対応ができない」
といった声が寄せられました。
塾の生徒たちからも「〇〇の科目の先生がずっと病気で休んでいるから、授業が進まない」という話を何度か聞いたことがあります。教員がいないため、他の科目の授業をやっているようで、定期試験の範囲が極端に短くなってしまったり、最悪の場合その年度内に教科書を終えることができなくなったりという影響が実際に出ています。
教員不足が生じている主な要因を複数回答で尋ねたところ、「不足が出たときに臨時教員希望の人が減少した」という回答が88%と最も多く、次に「特別支援学級が見込みより増えたこと」が59%、「産休・育休を取る教員が見込みより増えたこと」が53%、「病気で休職する教員が見込みより増えたこと」が43%となりました。
教員の働き方についても、29の教育委員会が「影響が出ている」と答え、残りのほぼすべてが「影響が出るおそれがある」と答えました。人数が少ないことで一人一人の教員にかかる負担が大きくなり、そのような過酷な職場環境を見ることで教員志望者がますます減ってしまうという悪循環にもなりかねません。
教員確保への課題
このような状況に対して、どのような対策が考えられているのでしょうか。文部科学省は、教員不足の解消に向け、教員免許を持ちながら学校で教えていない人材の活用に乗り出しています。こうした人は数百万人いるとされ、教育への関心も高いとみられるからです。文科省によると、具体的には最新の学校教育や子供への接し方などを学べるオンラインの研修プログラムを開発し、即戦力として教壇に立てるよう支援することで、潜在的な教員の掘り起こしを目指す、とのことです。
しかし、実効性には疑問も残ります。
ある経済誌の取材アンケートによると、「機会があれば、教員として働いてみたいか」の質問には「いいえ」の回答が57.6%と半数を超えたそうです。教員として働きたくない理由を聞くと、いちばん多い回答が「学校で働くのは過酷なイメージだから」というものでした。すでに何らかの職業に就いているため、簡単には教員の仕事はできないという人も多いようです。また、学校現場でも、教育の質の確保という観点から、臨時教師の採用に対してまだ積極的になれないという声もあるといいます。
国、自治体、現場がそれぞれの権限や責任の範囲内で協力して取り組まないと解決できない問題であることは確かですが、何年もかかってしまっては、今いる学生たちには間に合いません。今後の成り行きを見守るとともに、学生たちは「自分の身は自分で守る」べく、計画的に学習を進めていくことが必要だと思います。